年末になると駆け込みの仕事が増える。通常の仕事以外にも年内でケリをつけたい案件の洗い出しがあり、そちらの対応にも追われることになるから、営業マンはヒーヒー言っていた。その元で事務処理に追われる私たちだって同じように連日の残業だった。こういう事態は毎年繰り返されていたから慣れっこになっていたとは言え、たまには通常通りの時間に帰りたい…それが私たちの願いだった。

そんな状況に古参の女性がブチ切れた。営業が遅くなるのは構わない。お客様のご都合もあるし、日中では会えないこともあるだろう。でも、何故営業アシスタントの自分たちまでそれに付き合わなければいけないのか。営業マンが必要な書類をきちんとそろえてくれさえしたら、今の半分の残業で済むのではないのか。お客様にご入金日を念押ししてくれるだけで、もっと効率的に仕事が進むのではないか。年末は仕方ないにしてもクリスマス前後まで、こんなことには付き合えない。自分たちにだってプライベートな生活があるのだから。

このもっともな言い分に対して、男性陣は反論出来なかった。上層部だってこの時期の残業の多さには眉をひそめていたのだ。かくして今年のクリスマスを挟む週はノー残業デーとなり、デートやプライベートな予定を入れられることになった。きっぱりと抗議してくれた彼女には、何度お礼を言っても言い足りないくらいだ。その彼女は数年ぶりで家族そろってクリスマスを祝えると嬉しそうだ。私は特に予定はなかったが、久しぶりにゆっくり休みたい。近所の温泉にでも行こうと考えていた。

しかし、私のその計画はもろくも崩れ去った。同僚が友人たちと開くパーティーに誘われたためだ。「イケメンも来るわよ」という言葉にぐらついたわけではないけれど、パーティーなんて何年かぶりだったから心のどこかで出席したいと感じたに違いない。でも着ていくドレスがないことに気がついた。「レンタルすればいいのよ。今日退社後に一緒に借りに行こう」なんてったって今週は残業がないのだから！