京都に転勤になった私のアパートに、高校時代からの友人が遊びに来た。休日を利用して、京都観光をしたいのだと言う。私も無理をお願いして休みをもらったから、心おきなく友人と楽しむことが出来る。京都に来て半年くらいになってはいたけれど、いざ住んでみると観光に出かける余裕はなかったのだ。だから私自身も新鮮な気持ちで京都市内を歩くつもりだった。
神社仏閣や町屋を中心にそぞろ歩いて小腹が空いた私たちは、参道沿いのお茶屋さんに足を向けた。コーヒーとシフォンケーキのセットを注文する。前夜遅くに京都に着いた彼女と、思う存分おしゃべりを楽しむ。時々は電話で長話をしていたのに、こうして顔を合わせるとまた違ったテンポで会話がはずんでいく。「町屋の立ち並ぶ雰囲気は京都ならではのものだね」彼女は持参したデジカメでしきりに写真を撮っていた。
「人の住まなくなった町屋をリフォームして、事業を興したり店舗に改装することも増えているらしいよ」小さく頷いて彼女が話し続ける。「外国人観光客にも人気の都市だから、宿泊施設として再利用してもイケそうだね。そういう意味では、京都市は恵まれているよね」言われてみれば、スーパーなんかでもよく外国人を目にするような気がする。もっともまだ半年しか住んでいないので、移り変わりを実感できるかと聞かれれば自信はないけれど。
「さっき見た町屋、リフォーム中だったじゃない?耐震補強やってたところ」町屋は古くて耐震基準も緩いから、リフォームしようと思うとどうしても補強とセットになってしまうのだ。「床下に断熱材を入れてたね。京都は夏暑くて冬寒いと言うから、そういうのも一緒にやるんだろうね」そうか、これからその寒い季節を迎えることになるのだ。そう言えば、夏場は湿度が高くてしんどかった記憶がある。コーヒーを飲み干すと、私たちは立ち上がった。「次はどこに行く?」