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No.46 オーダー家具で購入した父のソファの張り替えを行った

ソファーや椅子に関して、父は独自の哲学を持っていた。あと数年で定年という晩秋、物置がわりに使っていた洋間を改修して自分専用の書斎を作り上げて私たち家族を驚かせたと思ったら、毎日ネットサーフィンでオーダー家具のショップをそぞろ歩いていた。椅子やソファーというのは身体を受け止める役目があるから、外観やデザインだけで選んではいけないというのだ。見てくれはお洒落で格好良いとしても、身体のためには良くないものは使いたくないのだと言う。

かといって人間工学的にどうこうという部分にまで踏み込んでいるわけではなかった。形や生地、風合いと座り心地の良さといったところに、自分なりのこだわりがあったのだと思う。出来上がった書斎に大きなデスクはあったものの、そのデスクに合う椅子と身体を休めて寛ぐためのソファーがない日々が続いた。メールで色々やり取りしているようだったから、いずれお披露目の時がくると予想はしていたけれど。

12月になって何となく気ぜわしくなってきた頃、父の家具が届けられた。東京の何とかいうショップからだった。夕方仕事から帰ってきた父は、書斎に直行して触り心地や座り心地を確認していた。中々姿を現さないので、しびれを切らした母と私は問答無用で押しかけたものだ。自分がオーダーしたソファーに身を委ねて、満足そうに微笑む父がそこにいた。どこか懐かしいくすんだ色合いの、いかにも父が好みそうなどっしりしたソファーだった。

「張り替えに出しましょうか」父が愛用していたソファーのスプリングは弱くなり、布地はところどころ擦り切れてきていた。書斎の主がいなくなってから、ソファーで寛ぐ者もいない。人が使わなくなると傷みが目立つのは、家も家具も同じなのだ。このソファーを作ってくれたショップの連絡先は、父のデスクのどこかにあるだろう。新盆を迎える今年、新しく張り替えたお気に入りのソファーに父は座ってくれるだろうか。

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